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大気圧合成

◇ 生産性向上を目指した大気圧下での薄膜合成技術と鉄道・車・容器への応用

 大気圧プラズマCVD装置とは、従来低圧下で行っていた薄膜の合成を大気圧下で行うための装置である。当研究室では、方式の異なる2つの合成装置(ライン式・リモート式)を用いて薄膜を合成している。応用先に適した装置を用いることで、フィルムのような平板基材や立体構造を持つ基材など多様な形状への薄膜合成が可能となり、応用先の幅が広がる。さらに近年では、大量生産を見据えたフィルム上への薄膜合成装置の新規開発に取り組んでいる。大気圧下での薄膜合成は、真空設備が不要になることや処理時間が短くなることが特徴として挙げられる。これにより、低コスト化と大量生産が可能となる。当研究室では大気圧下で合成した薄膜の実用化を目指し、薄膜合成装置の作製、薄膜の合成と分析および生産装置の開発に取り組んでいる。

 当研究室は、非晶質炭素 (a-C:H) 薄膜とシリカ系薄膜の2種類の薄膜を扱っている。a-C:H薄膜は、水素と炭素のsp2結合とsp3結合で構成された炭素薄膜である。その応用として、PETボトルへの合成に取り組んでいる。PETボトル内部にa-C:H薄膜を合成することで、酸素透過を抑制し飲料の劣化を抑えることが可能となる。また、近年ではa-C:H薄膜の紫外線遮蔽性を生かして、鉄道高架橋用コンクリートの保護を目指した薄膜の研究をしている。薄膜を被覆させたフィルムを表面に貼り付けることで、紫外線からコンクリートを保護することができる。一方シリカ系薄膜とは、Si-O-Si結合で構成されたガラスのような性質を有する非晶質な薄膜であり、硬度、光透過性、耐摩耗性などの優れた性質を示す。その応用として、高分子基材にシリカ系薄膜を合成し、耐摩耗性を大幅に向上させることで、樹脂ウィンドウを保護している。

 大気圧下での薄膜の合成は、使用する薄膜合成装置や合成条件により、薄膜の特徴が大きく変化する。例えば、原料ガスをアセチレンからメタンに変更すると成膜速度が大幅に低下する。 このような薄膜合成の特徴を体系的に理解し、大量生産につなげる取り組みをしている。

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